

楽しみたい子さん
カフェ、居酒屋、人気の観光地…
たったこの間までみんなでワイワイ楽しんでたことが、突然楽しめなくなっちゃって辛いよ!はやく前みたいに楽しみたいよ!
わかります…みんなで混んでる場所で、大声で楽しみたいですよね。でも、まだだめみたい…
でもね、一つだけ、あの日に戻れる方法があるんです。それは、マンガの世界に没頭すること!
「あの頃」が描かれているマンガを読んで、
少し前までごく普通の「日常」だったあの日々に戻ってみませんか?
コロナで突然失った、あの愛しい日々

ほんの数年、いや一年ちょっと前。(2021年2月現在)
私たちは、混みあったカフェにふらっと寄ってお茶を飲み、肩が触れ合いそうなほど人が密集した歩行者天国を歩き、休日には「人を見に来たのかな?」と錯覚するほどの人でにぎわう観光地に行って楽しく遊んでいましたね。
何も考えず。それがあたりまえの普通であり日常でした
それが、2020年初頭、新型コロナウイルスが突如として世界を襲って以来、私たちは、その「普通であり日常」を、突然奪われました。
人との距離を取りなさい。一緒にお酒を飲んだり食事をしてはダメ。
想像すらつかなかったことをいつも呼びかけられるようになり、かつて楽しんでいたあれこれは、ことごとく不可能になりました
ひたすら外に出ることを禁じられ、家にこもることを推奨される日々。

そんな中、ふと、「ちょっと前の日常」を思い出すと、なんだかとても遠い昔の話に感じます
寂しいですね。戻りたいですよね、かつての日常。
でも。ここだけの話、ちょっと前の日常に戻れる方法があるんですよ!
それは、漫画の世界にあるんです。漫画を通して、今日はかつての日常に、ちょっと心だけでもトリップしてみませんか?
本日はそんなかつての日常・東京編へ、このブログを読んでくださっているあなたをご招待します!
はじめてのひと(谷川史子)
かつての日常・東京にトリップさせてくれる漫画とは、はじめてのひと(谷川史子)といいます
この作品を描いた谷川史子先生は、80年代に少女漫画誌りぼんでデビューして以来、現在も漫画を描き続けているベテランの漫画家さんです
現在は大人の女性を主人公にした漫画を手掛けられることが多いです。少女雑誌時代の作風そのままに、現代のおとぎ話のようなかわいらしく幸せな世界を、その美しく繊細な絵によって紡ぎだしています。美しい絵柄を眺めるだけでも幸せな気持ちにさせてくれる作家さんです
この「はじめてのひと」もまた、現代を生きる大人の女性が数多く登場するオムニバス形式の作品です
中でもおすすめなのが、北別府美登利さんが主人公の物語です
このメガネの女性が北別府さんです
仕事も生活スタイルも整いすぎている!ヒロイン北別府美登利さん
北別府さんは35才の自立的な女性。これまで誰かを熱烈に好きになったことも、好きだと言われたこともないけれど、それを特にコンプレックスに思うことなく、堅実に日々を暮らしています。
自力で購入したマンションに住み(すごい!)、東京都心部の博物館の学芸員として仕事に励む中、心のモヤモヤが発生すると趣味のランニングや筋トレで頭を空っぽにします

彼女はバランスよい食事を日々しっかり作り、愛飲するコーヒー豆にもこだわりを持ち、仕事だけでなく、衣食住にも細やかに気を配りながら暮らす様が描かれています。
彼女が作中で自ら豆を挽いて淹れ、飲むグァテマラ。あまりに美味しそうで、私もつい買って飲んでしまいました。美味しかった~!
「完成された人生」に転がり込んでくるハプニング
なんというか…北別府さんの生き方は、ひとつの完成された生き方なんですよね
自分の人生を一分の隙なく、完全にマネジメントしているという感じです。個人的にとっても憧れる生き方です…
そんな完全体である北別府さんの人生に、思わぬ出来事が起こります
それは、これまで数えて一体何度目の招待なのだろう…という結婚式。30代半ばにもなると、招待される結婚式は膨大な数になりますね
でも北別府さんは少しも卑屈な思いを持つことなく、笑顔で新郎新婦に拍手を送ります。自分の人生に満足と充足を感じているからこそ、人にまっすぐな祝福を贈れるのだろうなぁ、と彼女の柔らかな表情をみて思います
そこでアクシデントが!式の終了後、帰ろうとした彼女は、同じ招待客だった見知らぬ男性とぶつかってしまいます。そのとき、間違って彼の引き出物を手に取って帰宅してしまうんです!
家へ帰宅した後、引き出物の中から、その男性の社員証が出てきてそのことが発覚!さあ困った、この彼に社員証を返さなければならない。
そこから、男性と北別府さんとの人生が不思議に交錯していきます

…心が汚れっちまった私は、正直「ちょっとうまくいきすぎなとこあるよねぇ…」なんて感想が浮かんでしまうこともなくはない…
が!そこはあえて目をつぶって。この現代版おとぎ話にひたすら没頭しましょう!するんです!
実は、この男性にはかわいい彼女がいるんです。大手百貨店の総務部に勤務し、フワフワキラキラで明るくかわいくて、お料理上手な女性。職場や知人男性にモテモテです
その彼女と北別府さんの生き方がまた対照的で、同じ女性といっても、考え方や生き方の大きな違いが見られます。そこにも大いに興味を惹かれます。
でも、どっちがいいか悪いかなんてのは決してありません。自分の持っている特質、どうありたいかと思う心は千差万別。自分はどの方向性にエネルギーを使っていくか?その考え方に違いがあるだけ。
みんなちがってみんないい!金子みすゞさんもそう詩でいってます。誰もがよくありたいと願いながら、ひたむきに日々を生きているんです
現代を舞台にしたおとぎ話
この絵柄もストーリーも、いつまでもずっと、本当にかわいくてきれいなんです。物語自体がまるで現代版おとぎ話のようで、大人向けの絵本を読んでいるような、幸せな気持ちになります。
マンガに没頭している間は、決して一筋縄ではいかないリアルから一時目をそらせます。漫画や物語って、その場にいながら簡単に現実逃避ができる、ありがたい存在ですよね…
ハードでヘビーな家庭環境に育った私は、幾度も物語に助けられてきたものです
2020年春、緊急事態宣言が発令されたとき。私は未知のウイルスへの不安と恐怖でいっぱいの心を鎮めるために、この物語を何度も何度も繰り返し読んで、必死で心を落ち着けていました。
ストーリーや絵柄の魅力もさることながら、そんなトリップ効果、癒しをこの漫画からもらって、私は何とか緊急事態宣言の緊張した日々をなんとか乗り越えることが出来ました
かつての「当たり前だった日常」が鮮やかに描かれている

そして何より、漫画に描かれている「かつての普通だった日々」が、妙に心にしみるんです。
恐らく舞台は2010年代半ばくらいかな?肩が触れ合うくらいに隣の人との席が近いカフェや居酒屋、おしゃれバーに気軽に立ち寄り、お酒や食事を楽しむ。夜でも人でいっぱいで明るく、美しい建物が立ち並ぶ町。そして昼も夜もたくさんのランナーでにぎわう皇居のまわり…
ほんの少し前までは単なる日常、今は日常ではなくなった日々。失って初めて、楽しかったな、キラキラしてたんだな、とあらためて気づきました。漫画を読みながら、かつての当たり前だった日常を思い、つい感慨にふけってしまいます
そんな懐かしくも楽しかったコロナ前の街の様子が、この「はじめてのひと」という作品で、谷川先生の美しい絵柄によって流麗に描かれてあります。
出版されたタイミング的に、図らずも、作品自体がコロナ前のごく普通で、生き生きとした生活の様子の記録図になっているんですね
「あの頃」を取り戻せるまで

2020年2月現在、日本でもワクチン接種が開始されました。あの日常を取り戻そうと、みんなでがんばっていますね。でも、完全にあの日々に戻るまでには、道のりはまだまだ険しく、そのゴールは遠いことが予想されます。
あの日常を完全に取り戻すまでのその間、谷川先生のはじめてのひとを読んで、心だけを一時的に、あの楽しかった日常にトリップしてみませんか?
それに、まじめで堅実な北別府さんと、突然出会いが訪れたこの男性とのこれからの行方、気になるところでしょう?それは読んでからのお楽しみです!
登場人物がみんなまっすぐで、一生懸命生きていて、それぞれがそれぞれの結末へ行きつく、そのスッキリ感も谷川漫画の醍醐味です。それを、ぜひ実際に手に取って、楽しんでください!
北別府さんの他にも、同僚の学芸員の話、その友達…とたくさんの女性が登場する、オムニバス形式の物語集であるこの「はじめてのひと」、ひとつひとつのストーリと丁寧な絵柄、とても楽しく読むことが出来ますよ。
この漫画の美しく繊細な絵柄が、優しいストーリーの数々が、コロナで疲れたあなたの心をきっと癒してくれます。
コロナに疲れ切ったとき、あの頃に心だけでも浸りたいとき。ぜひ、「はじめてのひと」を手に取って、一時でもそのやさしくも懐かしい世界に浸ってください!
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