私は昔から漫画が大好きです
最近は電子書籍で気軽に読むことができますね
電子書籍のおかげで、私は以前は全く読むことがなかったジャンル、遊郭や風俗に携わる人々を描く漫画も読むようになりました
私がこのジャンルの漫画を読むようになったのは、
自分自身が、毒親育ちという理不尽に直面させられてきたことに関係していると思います
- 登場人物たちは、理不尽で耐えがたい辛い場面に直面した時に、どんな生き方や考え方をするの?
- 辛い経験の後、彼女たちは、幸せをつかむことはできるの?
そんなことを知りたくて、そしてできればハッピーエンドだったたらいいな、と願いながら物語を読みます
この記事では、深く印象に残り、様々なことを考えさせられた3作品をご紹介したいと思います
※作品の性質柄、性的描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
親なるもの断崖

読了後の感想、壮絶の一言です…
東北の貧農の親元に生まれた美しい姉妹を中心に物語が紡がれていきます
昭和初期、ただでさえ寒く厳しい土地に飢饉が続き、東北の農村の娘は女工か娼妓(遊女)となることを求められました
娼妓(遊女)とは、体を売って生活の糧を得る女性のことです
幼い姉妹は親によって、遠い北海道の遊郭(娼妓が住み込みで商売をする店)に売られました
店についた姉妹は、自分の置かれた立場に気づきショックをうけます
やがて幼くも悲壮な覚悟を決め(心を殺して)仕事に真剣に取り組むようになりますが、
そうすると、周りからのいじめややっかみに遭います…
どう転んでも、苦しい日々が続きます

また、姉妹と一緒に遊郭に売られた近所の子達も様々でとても印象的です。
ある子は気立てがよく、やる気もあるのですが、
“不美人”、ただこの一点のためだけに、遊女にすらしてもらえず、下働きをさせられる様子が描かれます
現代社会でも容姿が良い人は得をする場面は少なくないですが、
遊郭という場所は、女性の容姿は残酷なほどに重要視される世界です
ここでもまた、自分ではどうしようもないことで、生き方を制限されてしまうのです
「この人は、この子は、これで少しは幸せになれるかもしれない。」
そんな瞬間が時に訪れます
しかし…その期待を裏切られる展開が続きます
中には、もともと持つ素質と機会、両方に恵まれている子もいます
目をかけられ、厳しい修行に耐え、一見華やかな成功を掴みますが、
心にある、幼い頃に抱いてしまった空虚感や歪みは払しょくできません

親に売られた遊郭で日々体を売り、借金を返し続けなければならない
どこにも逃げ場のない境遇と、戦争が不穏に絡む激動の時代が、彼女たちを翻弄します
ラストシーンでは、一応の救われを見ることはできるといえます、が…
「主人公が心からの幸せを感じた瞬間って、一体どれぐらいあったのだろう…」と、思いを馳せてしまいます。
遊女として生きる覚悟を決めた子供時代、その時点で、彼女の眼はすでにうつろで輝きはありません
実家で仲良く暮らしていた頃の顔つきと、は別人のように変わっています

また、毒親育ち視点から見ると、主人公の人生を辿ると、
「生まれた家にへばりつく不幸」を終わらせることの困難さを嫌でも感じさせられました
不幸な境遇で生まれ育った彼女たちは、幸せになるために必死です。
しかし、自分一代だけで家の不幸が完全に解決して、家族全員が幸せな状態に到達するというのは、大変困難なことなのです…
不幸の連鎖を止める。一人の悲壮な決意と命がけの努力から始まり、その後何代にもわたってやっと、少しずつ辛さや毒が薄まっていきます
途方もない「一族に根深く巣食う毒の、解毒への遠さ」を感じました
本当に気持ちがずんと重くなり読後は呆然となりますが、読み応えはとてもあります
物語の舞台は昭和初期から戦後にかけての、北海道は室蘭の製鉄所周辺の町です。
明治時代から続く、当時の製鉄業の繁栄と存在感の大きさを知ることができます。そして北海道という、大自然に包まれ、時に大いに荒れ狂う苛烈な環境の中、重労働を黙々とこなし、必死に生きる町の人々の姿も印象的です
罰かぶり~丸山遊郭哀史~
舞台は小さな遊郭。
いつも顔全体をすっぽり隠すように大きな鉢をかぶって、黙々と下働き生活をする「ばちかぶり」・阿蘭と、この小さな遊郭を懸命に切り盛りする女将さんが中心となるお話です
女将さんと阿蘭との絆、そしてこの遊郭とその周りで繰り広げられる様々な人間模様が描かれています
この漫画でとても印象的なのは、人の欠点や悪行を、これでもかというくらいリアルに描いてあるところです

意地悪な人、自己中な人、なにもかも嫌になって逃げだす人、人のせいにして平気な人…
そんな、個性あふれる悪さ(笑)を持つ人がたくさん登場します
彼らの顔は目が異様に垂れてたり吊り上がってたり、顔がひん曲がっていたり…容姿もまた様々です
内面も外面も、生々しく、あるがままの姿が描かれています
でも、どんなに嫌な奴でも悪いことをした人でも、お前は完全なる悪だ!ときめつけられ、罰せられることはありません
みんな、事情があって歪んでしまった。
背負うものの重さの余り、自分をかばうために他人を犠牲にしてしまった。
それでも、みんなに共通しているのは、置かれた立場でまいにち一生懸命、たくましく生きている、ということです
どんな人も日々必死に生きて命を繋いでいる。それってえらいしすごいことだよ
きっと誰かは、あなたが頑張って生きていることを見てるよ。知っているよ。
そんな作者の暖かいまなざしを感じます

そしてこの漫画のもう一つの見どころは、ばちかぶり・阿蘭が、その鉢の下に隠し持つ美しい金髪碧眼の容姿の「使い方」です
普段は悪目立ちする欠点となるために隠し続けている見た目を、ここぞ!というときに鉢を脱ぎ捨て、強力な武器として「使う」んです!
いつもは欠点でも、いざというときには強みや武器になる。このギャップが見ていてとても気持ちがいいです
女将さんと阿蘭との阿吽の呼吸の連携プレーも見事!です
阿蘭とおかみさんの関係は、巻が進むにつれてだんだん明らかになっていきます
阿蘭の出生の秘密、そして、阿蘭を産んだお母さんと女将さんとの、とても印象的なエピソードがありますので、それもまた読み進める楽しみになるかと思います
ブス嬢・百華無双~私の肉で眠りなさい~
前2作品とは全く雰囲気が変わります。タイトルと表紙からして強烈です(笑)つい最近この作品に出会い、いろんな意味で衝撃(笑撃?)を受けました
風俗業界に携わる女性にはより美しい容姿が求められます。
売り上げにも大きくかかわるのでしょう。
しかし、この主人公の見た目は、表紙からもわかるように、規格外で迫力満点!
だけども彼女の持つ超一流の技術とホスピタリティ精神、それに裏打ちされた自信に満ちたたたずまい、オーラに、読み進めるうちに間もなく魅了されます
彼女はいつも丁寧な言葉を使い、どんな人にも物腰柔らかい態度です。彼女はハイレベルな技術を携え、様々なお店や業態を自由に渡り歩きます
行く先々で、彼女の言動やサービスで、お客さんだけではなく、同僚や店長などの周りの人の意識をガラッと変えていきます。それがまた痛快です
彼女の仕事は、プロフェッショナルなサービス提供だけにとどまりません。お客さんの、性嗜好や言動の癖などに隠れている「本当に満たしてほしい部分」を的確に見抜き、解決に導くのです

仕事柄、お客さんとなる男性だけではなく、なんと女性にも同様の気づきや救いを与えます
彼女のサービスを受けたお客さん、彼女から感銘を受けた人からは、セラピー、ケア、というワードがよく出てきます
エピソードを読みすすめると、彼女が提供しているのは、もしかして、究極のセラピー、ヒーリングなんじゃないかな?と思い始めてしまいます
私も彼女に会ってカウンセリングしてもらいたい!(笑)こちらの作品は、只今連載中なので続きが大変楽しみです

私がこれら3作品の漫画作品を見つけて購入したのは、全て電子書籍サイトです
店頭で見ても決して選ぶことはなかったであろうジャンルを気軽に手に取って読むことができる、本当に良い時代です
3作品ともとても読みごたえがありますので、漫画好きとしてぜひお手に取ることをおすすめしたいです
以上が私が深く印象に残った、「遊郭、風俗に携わる人達」を題材とした、漫画3作品の紹介でした
コメント